【私の視点 観光羅針盤83】2017年はどんな年に? 安田 彰


 御慶 今年は酉年、一般に商売繁盛の年といわれる。酒という字の旁(つくり)にもあるとおり、果実などが熟し極まった状態を指すともいわれる。果たして今年は常態となった長い長い低成長から抜け出せる画期的な年となるのだろうか?

 暮れを振り返ると昨年を象徴する漢字が「金」、カジノ法案、都議会の自民公明蜜月終焉、日ロ首脳会談、トランプ次期米大統領の素早い動き等々、現実世界は目まぐるしい変化を見せている。わが業界の今年1年は今から予断を許さない。

 ただはっきりしているのは、時代の変化に追いつけず対応できない企業は淘汰されるという事だ。経営者にはこれまで以上の時代感覚が要請される。とりわけITの甚大な力やビジネスへの影響に敏感でないと時代に取り残されるだろう。

 例えば昨年末のAirbnbの総会でCEOが強調したのは、旅における「体験」の重要性であった。これ自体目新しいものではない。しかしその内容は「マジカル(魔法みたいに魅力的)」かつ瞬時に手にできなければならないという。ここがポイントだ。

 日本でも着地型商品づくりが推奨され、各地のDMOがその地ならではの体験型ツアーを作っているが、成功事例は多くない。「マジカル」ですぐに申し込めるものが少ないのだ。体験内容は面白くても、情報発信の力不足や申し込み手段が複雑すぎることもある。

 一方、マスコミの力に対しても自覚的でないといけない。箱根の噴火による風評被害(正しくは“不正確な”情報提供)も、マスコミ対応のまずさによるところが大きかった。メディアを上手に活用してまずは正しい情報提供をする。同時に独自の情報プラットフォームを持ち、他の媒体との連携も含め積極的な情報合戦に打って出る。でないと先行する観光地に負けてしまう。

 目を転じれば、日本を巡るさまざまないい情報が世界を駆け巡っている。国家ブランド指数は米・独・英に次いで世界4位(独情報会社)、美食レストラン選定数ではフランスを抜き世界一(仏ランキング会社)、京都・ヤフーがICTで観光等包括協定、仙台が韓国の会社と東北6県特化のインバウンド開発で協定、スマホで映像を見た人の45%弱が実際に訪問・またはしたいと考えており、若者ほど訪問率が高い(JTB)等々。

 できない理由はすぐにあげられる。でも1歩踏み出すものは数少ない。ないものねだりはもうやめて、地域連携によってあるもの探しをし、有効な情報発信に努めるものが今年は酉年の実感を手にできるのだろう。

(亜細亜大学教授)

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